再生可能エネルギーの普及により、将来電気代が大幅に安くなる…かもしれない報道についてお伝えしている本記事の第二弾。
今回は、SBエナジー社長が報道番組内で語った「電気の価格は限りなくタダに近づくと思います」という発言について、その理由をお話したいと思います。
前回の記事をお読みだない方は、まずこちらをお読みください。
電気代が大幅値下げ!?再生可能エネルギーの世界事情 その1
他国より割高な、国内の再生可能エネルギー事情
すでにご自宅で太陽光発電を導入されている方やきちんと電気料金の明細を確認している方はご存知かと思いますが、日本国内における再生可能エネルギーの発電コストは決して安くはありません。
例えば関西電力の場合、平成29年度の太陽光発電における1kWhあたりの買取金額は、条件にもよりますが22.68円~30円になります。10kW以上2,000kW未満は一律22.68円になります。
仮に1月あたりの平均発電量を500kWhとすると、一般家庭の場合はほぼ22.68円/kWhと言っても差し障りは無いでしょう。
※出典:関西電力 買取単価および買取期間
厳密な話をすればキリが無いのですが、電力会社からすればこの22.68円がおおよその発電コストと言う事になります。
さて、これらを踏まえたうえで、前回もお伝えした世界の再生可能エネルギーの発電コストを見て見ましょう。
国名 |
エネルギー名 |
発電コスト(1kWh) |
日本 |
風力 |
21円 |
太陽光 |
21円 |
石炭火力 |
12円 |
原子力 |
10円~ |
モンゴル |
風力 |
4.0円 |
アラブ首長国連邦 |
太陽光(建設中) |
2.6円(予定) |
アメリカ |
風力 |
5.1円 |
チリ |
太陽光 |
3.1円 |
オーストラリア |
風力 |
4.4~7.7円 |
ドイツ |
太陽光 |
10.5円 |
デンマーク |
風力 |
6.0円 |
南アフリカ |
風力 |
5.5円 |
※自然エネルギー財団 ゲヴォルグ・サルクジアン世界銀行等の情報より
ご自宅で太陽光発電を導入されている方からすれば、ありえない数字ですね(笑)
なぜ発電コストが高いのか?
太陽光発電にの発電コストにおいて、建設予定レベルではありますがアラブ首長国連邦と日本では実に10倍ほどの差があります。
これには様々な理由があり、1個1個掘り下げていくとかなりのボリュームになるので主な要因を上げて見ると
- 太陽光パネルなど機器の単価が日本は高い
- 発電施設の建設費(人件費等)が日本は高い
- 日本と海外での税制面の違い
- 国策として大量の補助金が出ている国があり、設置する企業としても動きやすい
- 日照時間の違いによる発電効率の違い
といった項目があります。
単純に、アラブより日本の方が「太陽光発電をするには向いていない国」と言う事なんですね。
さらに毎月私達の電気代に加算されている再生可能エネルギー発電促進賦課金は、その名の通りコストの高い再生可能エネルギーを電力会社が企業や一般家庭から買い取る資金に充てられます。
逆に言えば、このような仕組みが無ければ国内の電力会社は再生可能エネルギーを販売することが難しいと言う事になります。
どうすれば国内の再生可能エネルギーは安くなる?
ソフトバンクグループのSBエナジーがモンゴルのゴビ砂漠に建設していた風力発電所が、つい先日完成したようです。
この発電所は当面モンゴル国内の電力の供給に使われるのですが、2020年には日本まで電力を持ってこようと言う計画が動いているとのこと。
これは、ソフトバンクの孫社長が提唱した、「アジアスーパーグリッド」と言う構想の一部になります。
アジアスーパーグリッドとは?
北はロシア南部・西はサウジアラビア・南はシンガポールとアジア全域を送電網で結ぶ事により天候に左右されやすく安定供給が難しい再生可能エネルギーの永久供給を可能にする…というとんでもないプロジェクトです。
仮に日本で風が吹かず、太陽が雲で覆われていたとしてもアジアのどこかでは快晴で、風が強い地域もあるでしょう。
例えばゴビ砂漠には強烈な偏西風が吹き荒れています。今回SBエナジーはその偏西風に目を付けゴビ砂漠に巨大な浮力発電施設を建設しました。
日本国内での風力発電のコストは21円/kWh。今回のモンゴルでは4円/kWh。同じ施設を日本に建てた場合の発電コストと比較すると約1/4。
確かにこれだけ安い電力を日本国内に送電できるのなら、私達の電気代が安くなるかもしれませんね。
問題点は?
映像では、送電網における技術でいな所は可能であるとの報道内容でした。
しかし、実際にこの構想を実現するには問題もあります。
電気を他国に突然止められるリスク
例えば今回のゴビ砂漠で発電した電力を日本に送電する場合、ロシア経由で送電網を這わすか、中国>海底ケーブル経由で韓国と経由し日本に送電する2つのパターンが考えられます。
モンゴル国内で安定して発電できたとしても、送電網がある国と何かトラブルが発生した場合、電力供給が滞る可能性があります。
また、日本と該当国との問題ではなく、該当国の様々な事情(テロやストライキ・事故や天災等)によって送電が止まってしまう可能性は否定できません。
海外から電力を送電するための法整備が必要
そもそもこういった海外諸国との事業は何かと法整備が付き物です。日本に関しては他国とこのような協定を結んだ事が無く、これから法整備を整えていくような形になります。
原発再稼働が前提な日本の発電事情において、現在日本国内の発電電力における再生可能エネルギーの比率は6%。(ちなみに原発は0.9%)
2015年のデータではありますが、このような状況の日本が積極的に法整備を進めていくとはあまり考えにくいように思えます。
今後の展望は?
ゴビ砂漠では、将来的に原発13基分という途方もない量の発電計画が立てられています。
そんななか去年、中国・韓国・ロシアの政府系電力会社3社とこの構想を推進することで合意したそうです。
孫社長が目を付けた再背可能エネルギーのビジネス。今後世界中で様々な技術革新が進んでいくのは間違いなさそうです。
今日明日にすぐ電気代が安くなると言う事は無いでしょうが、10年・20年後にはもしかしたら今より大幅に電気代が下がっているかも…なんて事もあるかもしれませんね。